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『LA LA LAND ラ・ラ・ランド』感想

 キャッチコピーは「観るもの全てが恋に落ちる、極上のミュージカル・エンターテイメント

 

素敵な映画だった。それに尽きる。

どうかみんな観に行ってほしい。

 

 

私は残念ながら映画に精通している訳ではないので「ここが○○のオマージュで……」なんてことはまったくもってわからなかったが、鮮やかな色彩と感情の吐露としての歌、ダンス、ストーリーに引き込まれた。

パンフレットの町田氏の文章には細かく作品名が載っているので、2回目に観に行く際にはとても参考になるだろう。

 

さて冒頭のロサンゼルスの日常の光景である(らしい)とてつもない渋滞。
たくさんのカーステレオから流れ出す曲の洪水。
バラバラだった音が次第に収束し、ひとつの音楽を奏で始めると、歌いだした女性が車の扉を開ける。しなやかな肉体を湿度のない強い日差しに晒してのびやかに踊り出して、その感情は次々に他の車の乗客も巻き込んで、すし詰めの道路はさながらステージになってしまう。
そんな始まりで迎えるLA LA LANDはとても楽しそうだが、主人公であるセブとミアに焦点が合うにつれ、賑やかで眩しいクリエイター、アーティスト、パフォーマーの街の非情さを感じる。輝いていないものには厳しい街なのだ。
ごく小さいライトの当たる場所に向かって、多くの人たちが必死に走っていく忙しい世界。

 

ミアは女優を目指して大学を中退し、3人の女性とルームシェアをしている。オーディションを受けたり、脚本家などの集まるパーティでコネクションを広げたり、楽しんだりする若い女性だ。
セブは「死にそうになっているジャズを生かす店」を作ろうとして人に騙され、殺風景で「彼の宝物」だけに囲まれた部屋に住むピアニストだ。自分たちのおしゃべりに夢中な人たちに向かって「ジングルベル」を鳴らすことを仕事にしている。

 

夢までの道筋が遠く思えて砂漠を歩くような心境のそのふたりが、各季節で偶然にも出会う。
LA LA LANDは互いに「気に食わない相手」から「愛する人」に変わっていく物語だった。


ああ可愛かった。

 

 

 

以下ラストのネタバレを含む感想。

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最後の「ふたりが結ばれる未来」の夢は、単なる夢ではないと監督が言っていたことに関して、私が思うのは
どちらも均衡した未来の姿なんじゃないかというロマンチストの希望、願い、すがるような気持ちとも言える考察。

 

視聴者としてはセブとミアが結ばれる姿を想像するし、最初はつっけんどんだったふたりが、手を取り合い、互いの大切なものを分かち合い、大事にしていく様を見て、ずっとかわいいふたりを見てきて、どうしても応援してしまうし、ふたりの「夢に対して諦念と悲しみを抱えている様」に共感して
「ふたりで幸せになってほしい」

「ふたりが一緒にいると幸せそうだからその時間がいつまでも続けばいいのに」

と思ってしまうけど、ふたりの夢を同時に叶えるには「選び取らなくてはならない選択肢」がそこここに存在していたんだと感じる。

 

決定的で大きなターニングポイントは

セブのバンドのツアーについていかないミア
ミアのパリでの撮影についていかないセブ

だと私は見ているんだけれど、

 

どちらも自分の夢を優先して「もうひとつの選択肢」を選び取らない結果が、あの結末に繋がるんじゃないかなと思っている。

現実のふたりは「夢を叶えたけれど好きな人を失った」ように見える。
もしかすると「夢を叶えたけれど好きな人を失ったセブ」と「夢も叶えて恋愛でも成功しているミア」に映るかもしれない。
でも私は思うのだ。

ふたりは「職業としての夢を叶えて、ふたりで生きていく夢を失った」のではないかと。


証拠に「ふたりが結ばれる未来」のふたりに大事なのはどちらも「ジャズとチキンを売る店のマスター」でも「スターダムにのし上がった女優」であることでもなく、
人生のメインであるのは好きあった「男」と「女」だ。

それもひとつの幸せの形で、視聴者としての私は「穏やかに過ごし、子どもを育てる、その幸せをつかみ取ってほしかった」と思ってしまうけれど、あれもまた「失った」姿なのではないか。

 

つまり、あのふたりは「ふたりで生きていく夢を叶えて、職業としての夢を失った」のではないかと。



そういった意味で、あのラストの対比は「成功」「不成功」でも「幸福」「悲哀」でも「希望」「現実」でもなく
「選び取ったふたつの道筋」それぞれなのだと思う。

 

 

私はエンディングで胸を引き絞られるような思いをして泣いたけれど、すごくすごくいい映画だった。最高だ。

 

夢を追いかける人たちの数だけ瞬いているロサンゼルスの輝きを覗き見ることが出来て、
とても感謝している。